最近、ロボットやAIが注目されるようになりました。つい少し前にチェスの世界王者がAIに敗北したと思ったら、今度は囲碁、続いてポーカーまでも、プロがAIに敗北しました。

そんな中「ロボットやAIによって仕事が奪われる」という恐怖感が世の中を包み、Googleで「仕事 奪われる」と入力すると、同僚、上司、ロボットという順番で出てくるようになりました(笑)


しかし、僕は「ロボットやAIが人間の仕事を奪う説」には懐疑的です。

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まず直感的に考えて欲しい事があります。古来我々人類は、最初は狩猟を行っていました。それが農耕、畑を耕し作物を取る民族になりました。その後機械が発展し、産業革命が起こりました。

現代に至るまで、多くの人、おそらく王様以外はもれなく全員、畑を耕していたハズです。今となっては、農業従事者はむしろマイノリティです。それを可能にしているのが、機械化と化学肥料による大量生産です。そこで考えます。果して、農業の機械化と化学肥料の進化に伴う農作物の大量生産によって、人類は仕事を奪われたのか?答えはノーです。農業を辞めて、機械を作る人、肥料を作る人が生まれたに違いありません。

さらに時代は進み、色々な仕事が機械化されました。従来人間が行っていた仕事を機械が行うようになり、さらに生産は効率化され、新しい進化と発見により新たな仕事が産み出される。こうして資本主義社会はどんどん進化していきました。

しかし、当事者からしたらそうは思わなかったかもしれません。農作物を10人で作っていて、機械が来たから2人で良い、という理由で8人がクビになれば、その8人の気持ちとしては「機械に仕事が奪われた」と思うかもしれません。ただ、マクロで見ると実際は新しい仕事が生まれていて、そちら側にまわれば「仕事を奪われ」ない事になります。そちら側にまわれるかどうかは、その人の能力、生きる力次第なので、もしまわれなければ自己責任です。農業に従事している人で、農業の仕事を持っているけれど「なんだかあっちの新しい、機械とかっていう金属を作る仕事の方がおいしそうだ」と思った人が、農業の仕事を捨てて機械を作る仕事についてしまう事だってありうるはずです。

洗濯機ができて失われた仕事があるはずですが、新たに生まれた仕事があるはずです。
冷蔵庫ができて街の氷屋は廃業したはずですが、新たに冷蔵庫メーカーに就職した人もいたでしょう。
携帯電話ができて、固定電話をつなぐ仕事は減ったはずですが、携帯電話関連の仕事は増えたでしょう。
iPhoneができて失われた仕事があるあはずですが、新たに生まれた仕事があるはずです。

以上から、直感的に「ロボットが人間の仕事を奪う事は無い」というのは理解できると思います。

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少し難しい話に入ります。ロボットが人間の仕事を奪えない理由のヒントが、僕の好きなマルクスの資本論に書いてあります。ここから先は、マルクス信者の理論になりますのでご注意下さい。

なぜロボットによって人類の仕事は奪われないか、それは一言で言えば、資本主義社会に於いて剰余価値を生み出せるのは人間の労働によってのみである、からです。ここで詳細は説明していられないので、ざっくりと書きます。

会社は基本的に利益を上げられる組織です。なぜならば、労働者が生み出した剰余価値を搾取しているからです。

1個1000円の商品Aがあるとします。1個300円の材料、それを生産する機械、人件費がかかります。それを生産する機械が10000円するとして、100回使うと壊れるとします。すると、商品1個あたりの機械の値段が100円です。労働者を1人雇うと、商品Aを1日5個生産できるとします。人件費を除くと、会社の利益は以下のようになります。

販売価格=5×1000円=5000円
 材料費=5× 300円=1500円
 機械費=5× 100円= 500円

利益(人件費抜き)=5000ー(1500+500)=3000円

そこに人件費が乗ります。本来であれば、3000円の価値を生み出したのは労働者であるので、労働者の1日あたりの賃金は3000円になります。しかし、会社は労働者に2000円を賃金として渡し、労働者はそれで納得してしまいます。結果、1000円を利益とします。

販売価格=5×1000円=5000円
 材料費=5× 300円=1500円
 機械費=5× 100円= 500円
 人件費=            2000円

利益=5000ー(1500+500+2000)=1000円

さて、ここで労働者は怒ります。

俺の生み出した価値を搾取しやがって!

そこで怒った労働者は、会社をやめて自分で商品Aを作り出しました。

すると、高度に機械化された中では1日5個作る事ができましたが、自力でゼロから作ろうとすると、1日1個が限界のようです。すると、労働者の利益は以下のようになります。

販売価格=1000円
 材料費= 300円

利益=1000ー300=700円

会社勤め時代は1日2000円もらえていたのに、会社をやめたら1日700円、給料は半分以下になってしましました。労働者は社長に土下座して、また会社に入れてもらえました。ペナルティとして、給料は1日2000円から1500円に減らされました。



もうこの時点で理解していただけたと思いますが、利益の源泉は労働者の労働力です。賃金に対してより多く働いた労働者の労働によって、利益(=剰余価値)が生み出されています。

ここで、商品Aをオートで生み出すロボットが開発され、ロボットだけで生み出されるとします。性能は従来の機械と同じ、ただ人の手が不要、という条件だとすると

販売価格=5×1000円=5000円
 材料費=5× 300円=1500円
 機械費=5× 100円= 500円
 人件費=               0円

利益=5000ー(1500+500+0)=3000円

となり…ません。

こんな儲る状態であれば、ロボットが10000円で済むはずがありません。誰の手も加える事なく利益をあげられる状態であれば、この事業はロボットの生産会社が行っているハズです。自前で作ったロボットに働かせて、商品Aを生み出しまくれば儲ってしまいますから。

では、このような状態にならないというならどうなるでしょうか。商品Aの価値が、1個1000円から値下がりし、販売価格は「材料費+ロボット制作費」まで値下がりしてしまうでしょう。つまり下記のようになります。

販売価格=5×(300円+?)=1500+5×?円
 材料費=5× 300円=        1500円
 機械費=5×   ?円=             5×?円

利益=0円

という事で、剰余価値を生み出せないロボットや機械が、人類の代わりを出来るはずが無いわけです。

ただ、もし資本主義が終わりを告げれば、世界は変わるかもしれません。今のところ代わりになるシステムは見つかっていないと認識しておりますが。

以上、話をまとめます。資本主義社会に於いて、剰余価値を生み出せるのは労働者だけです。ロボットや機械の発展が確かに生産性を高めますが、完全に人の手無しのモノやサービスは生まれません。ロボットや機械の発展により、一時的に職を失い「仕事を奪われた」と思う人が出てくるでしょう。しかし、失われた仕事があれば必然的に生み出された仕事もあるはずで、その変化に対応出来れば怖くありません。

よくブログでも書いている、僕のマルクスよりも好きなダーウィンの言葉を記しておきます。

最も強い個体が生き残るのではなく、最も賢い個体が生き残るのでもない、唯一生き残る事ができるのは、変化に対応できる個体だ

掃除なんてルンバにさせて、その間に本を読みましょう。それを仕事に生かしましょう。そういう事だと、僕は思っています。