厚生労働省のデータを用いて、将来の医師数、医療費から医師の給料の推移を、簡易的に予測してみる。
医師数の推移
医師数は以下のように推移している。
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師の概況」より http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/gaikyo.pdf
ざっくり言うと、2年で1万人、年間5000人の医師がここ30年ほど継続して増加している。
問題は、このまま年間5000人の医師数の増加が見込まれるかどうか、という点にある。医師数の増加は、以下の計算式で示される。
医師の増加数の推移を推計する
増加数の予測のために、医師国家試験合格者数の推移を見てみる。医師国家試験予備校大手のTECOMホームページより引用。
第110回医師国家試験 https://www.tecomgroup.jp/igaku/topics/110.asp
通年、医師国家試験の合格者は7600人程度であった。これは、日本における医学部の人数が限られているため、一定の合格率であれば常に一定の人数が排出される仕組みである。
しかし、この数字を見ればわかるように、徐々に合格者数が増加している。これは「卒業した医学部生が増えた」ことを示している。合格率は一定で90%前後であるからだ。
これの意味するところ以下のとおり。2006年、たらい回しなどのニュースが世間をかけめぐり、とうとう医療崩壊というニュースまで沸き起こった。2009年あたり、医師不足がニュースになったことを受けて医学部の定員を増やす動きが出てきた。その生徒が、卒業したのが108,109回医師国家試験のあたりである。
今後どういう推移をするか不明である。ずっとこの上昇率で増えるのは想像しがたい。仮にしばらく、直近の8600人程度であったとすると、年間の医師国家試験合格者数は1000人、13%増加した状態である。
次に、医師をやめた人数(死亡も含む)の推移を考える。
医師をやめた人数は、正確には増加すると思われる。なぜなら、医師数そのものが数十年にわたって増加を続けたのだから、医師免許を持っている人の数は増えている。医師をやめた人数(死亡も含む)も増えるはずである。
しかし、徐々に長生きができるようになった日本では、老人医師が増えたと予測できる。つまり、昔だったら死んでいた年齢の医師が、現代の日本では生きている可能性がある。この多寡を調べる事はほぼ不可能なので、ここは簡易的に「医師免許を持っている人の増加による、医師をやめた人数(死亡も含む)の増加」と、「死亡率低下=長生きする事による、医師をやめた人数の減少(ここでは主に死亡による減少)」は同等だとする。
つまり医師をやめた人数(死亡も含む)は増減が相殺、横ばいだと仮定する。
【加筆:ただこの「医師免許を持っているが高齢でとても働いていない老人医師」を医療現場の医師1人と同等に扱うのは、やや疑問】
以上をふまえて、以下の式を考える。
増加数は約年間5000人であったが、通年の医師国家試験の合格者数は7600人であった。つまり、石をやめた人数(死亡も含む)は年間2600人程度と推計できる。この2600という数字は、増える可能性が高いが推計できないのと、上述したように変わらない可能性も示唆されるため、不変と仮定する。
【加筆:なお「医師免許を持っているが医師として働いていない」人も、この2600人に含まれるだろう。】
医師国家試験の合格者数がここ1、2年で年間1000人増えたので、医師をやめた人数(死亡も含む)が同値であった場合、将来的な医師の増加数は以下のようになる。
つまり、医師は年間6000人増加すると予測できる。
医療費について考える
現在、日本では医療費がうなぎのぼりである。以下の厚生労働省のデータを見て欲しい。
2025年問題とされる問題がある。団塊の世代が一気に高齢化するタイミングである。そこまで患者数の増加が、現在の増加率で続くと考える。ここ4年で3.2兆、約年間0.8兆円、8000億円である。2025年の医療費は、40兆+0.8兆×11年=48.8兆円であると推計される。(2014年、H26年からの計算。)
一方医師数は、311000人+6000人×11年=377000人である。
医師の給料を考える
医療費 ÷ 医師数を、医療係数αとする。αは、医師1人あたりの医療費である。医師の給料は医療費から支払われていることから、αは医師の給料を反映する。ここで、医師の給料はαに比例すると簡易的に考える。
1990年の医療係数α:125119808(円)
2010年の医療係数α:124067796(円)
2014年の医療係数α:128617363(円)
2025年の医療係数α:129442970(円)
2025年医療係数αは、2014年の医療係数αと比べて1.006倍となり、ほぼ同等であることがわかる。
【加筆:今思うと、医療係数αは病院建築費、医療に使う様々な材料費、電気代などの固定費と、人件費などの変動費に分類できる。厳密には医療係数αだけで比較するのではなく、αから固定費を差し引いたβで考察するべきだろう。】
【加筆:そうなると、医療係数βはαよりも相対的な動きが大きい事がわかる。例えばαのうち固定費が1億円だとすると、2014年のβは2861万、2025年のβは2944万で相対値は1.029倍になる。それでも大した差がある内容ではないが。】
つまり、現状の医師の給料は、しばらく横ばいである。
しかし、高齢者がピークに達する2025年付近から医療費は減少する。そして、医師の数は医学部定員を元の状態に戻したとして、それでも医師数は年間5000人増加する。
下記の図は、今後の日本の人口推計予想である。
やはり、2025年あたりの65歳以上人口がピークであるようだ。パッと見ると65歳以上の人口を示すオレンジの帯の高さがほぼ一定である。もちろん、数が一定でも全体の人口が減り続けるため、高齢化率はうなぎのぼりのままである。
こうなると、αは2025年あたりを最大値としそうだと予測できる。なぜなら、2025年以降、65歳以上人口が変わらない(=医療費は横ばい)のに対し、医師は(今の状態だと)増加し続けるからである。
さらに言えば、このまま何も対策を取らなければ、日本という国は徐々に産業も衰退し、国力が無くなる。国力が無くなれば、医療費は国が賄えなくなる。そうなれば、さらに医療費削減が続き、病院関係者の給料が下振れする可能性が高い。
結論を言うと、医療係数αは、2016年現在とほぼ変わらない状態で2025年周辺まで推移し、以後低下すると予測される。そして、医師の給料はそれを反映するため、「今がマックス」と言えるだろう。正確には「あと10〜15年現状維持、以後下がる」となるだろう。
医師数の推移
医師数は以下のように推移している。
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師の概況」より http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/gaikyo.pdf
ざっくり言うと、2年で1万人、年間5000人の医師がここ30年ほど継続して増加している。
問題は、このまま年間5000人の医師数の増加が見込まれるかどうか、という点にある。医師数の増加は、以下の計算式で示される。
医師の増加数= 医師国家試験の合格者数 ー 医師をやめた人数(死亡も含む)
医師の増加数の推移を推計する
増加数の予測のために、医師国家試験合格者数の推移を見てみる。医師国家試験予備校大手のTECOMホームページより引用。
第110回医師国家試験 https://www.tecomgroup.jp/igaku/topics/110.asp
通年、医師国家試験の合格者は7600人程度であった。これは、日本における医学部の人数が限られているため、一定の合格率であれば常に一定の人数が排出される仕組みである。
しかし、この数字を見ればわかるように、徐々に合格者数が増加している。これは「卒業した医学部生が増えた」ことを示している。合格率は一定で90%前後であるからだ。
これの意味するところ以下のとおり。2006年、たらい回しなどのニュースが世間をかけめぐり、とうとう医療崩壊というニュースまで沸き起こった。2009年あたり、医師不足がニュースになったことを受けて医学部の定員を増やす動きが出てきた。その生徒が、卒業したのが108,109回医師国家試験のあたりである。
今後どういう推移をするか不明である。ずっとこの上昇率で増えるのは想像しがたい。仮にしばらく、直近の8600人程度であったとすると、年間の医師国家試験合格者数は1000人、13%増加した状態である。
次に、医師をやめた人数(死亡も含む)の推移を考える。
医師をやめた人数は、正確には増加すると思われる。なぜなら、医師数そのものが数十年にわたって増加を続けたのだから、医師免許を持っている人の数は増えている。医師をやめた人数(死亡も含む)も増えるはずである。
しかし、徐々に長生きができるようになった日本では、老人医師が増えたと予測できる。つまり、昔だったら死んでいた年齢の医師が、現代の日本では生きている可能性がある。この多寡を調べる事はほぼ不可能なので、ここは簡易的に「医師免許を持っている人の増加による、医師をやめた人数(死亡も含む)の増加」と、「死亡率低下=長生きする事による、医師をやめた人数の減少(ここでは主に死亡による減少)」は同等だとする。
つまり医師をやめた人数(死亡も含む)は増減が相殺、横ばいだと仮定する。
【加筆:ただこの「医師免許を持っているが高齢でとても働いていない老人医師」を医療現場の医師1人と同等に扱うのは、やや疑問】
以上をふまえて、以下の式を考える。
医師の増加数= 医師国家試験の合格者数 ー 医師をやめた人数(死亡も含む)
増加数は約年間5000人であったが、通年の医師国家試験の合格者数は7600人であった。つまり、石をやめた人数(死亡も含む)は年間2600人程度と推計できる。この2600という数字は、増える可能性が高いが推計できないのと、上述したように変わらない可能性も示唆されるため、不変と仮定する。
【加筆:なお「医師免許を持っているが医師として働いていない」人も、この2600人に含まれるだろう。】
医師国家試験の合格者数がここ1、2年で年間1000人増えたので、医師をやめた人数(死亡も含む)が同値であった場合、将来的な医師の増加数は以下のようになる。
医師の増加数= 医師国家試験の合格者数 ー 医師をやめた人数(死亡も含む)
=8600ー2600
=6000
つまり、医師は年間6000人増加すると予測できる。
医療費について考える
現在、日本では医療費がうなぎのぼりである。以下の厚生労働省のデータを見て欲しい。
2025年問題とされる問題がある。団塊の世代が一気に高齢化するタイミングである。そこまで患者数の増加が、現在の増加率で続くと考える。ここ4年で3.2兆、約年間0.8兆円、8000億円である。2025年の医療費は、40兆+0.8兆×11年=48.8兆円であると推計される。(2014年、H26年からの計算。)
一方医師数は、311000人+6000人×11年=377000人である。
医師の給料を考える
医療費 ÷ 医師数を、医療係数αとする。αは、医師1人あたりの医療費である。医師の給料は医療費から支払われていることから、αは医師の給料を反映する。ここで、医師の給料はαに比例すると簡易的に考える。
1990年の医療係数α:125119808(円)
2010年の医療係数α:124067796(円)
2014年の医療係数α:128617363(円)
2025年の医療係数α:129442970(円)
2025年医療係数αは、2014年の医療係数αと比べて1.006倍となり、ほぼ同等であることがわかる。
【加筆:今思うと、医療係数αは病院建築費、医療に使う様々な材料費、電気代などの固定費と、人件費などの変動費に分類できる。厳密には医療係数αだけで比較するのではなく、αから固定費を差し引いたβで考察するべきだろう。】
【加筆:そうなると、医療係数βはαよりも相対的な動きが大きい事がわかる。例えばαのうち固定費が1億円だとすると、2014年のβは2861万、2025年のβは2944万で相対値は1.029倍になる。それでも大した差がある内容ではないが。】
つまり、現状の医師の給料は、しばらく横ばいである。
しかし、高齢者がピークに達する2025年付近から医療費は減少する。そして、医師の数は医学部定員を元の状態に戻したとして、それでも医師数は年間5000人増加する。
下記の図は、今後の日本の人口推計予想である。
やはり、2025年あたりの65歳以上人口がピークであるようだ。パッと見ると65歳以上の人口を示すオレンジの帯の高さがほぼ一定である。もちろん、数が一定でも全体の人口が減り続けるため、高齢化率はうなぎのぼりのままである。
こうなると、αは2025年あたりを最大値としそうだと予測できる。なぜなら、2025年以降、65歳以上人口が変わらない(=医療費は横ばい)のに対し、医師は(今の状態だと)増加し続けるからである。
さらに言えば、このまま何も対策を取らなければ、日本という国は徐々に産業も衰退し、国力が無くなる。国力が無くなれば、医療費は国が賄えなくなる。そうなれば、さらに医療費削減が続き、病院関係者の給料が下振れする可能性が高い。
結論を言うと、医療係数αは、2016年現在とほぼ変わらない状態で2025年周辺まで推移し、以後低下すると予測される。そして、医師の給料はそれを反映するため、「今がマックス」と言えるだろう。正確には「あと10〜15年現状維持、以後下がる」となるだろう。