これは一般的な勤務医の勤務形態について、時系列を追って紹介した記事です。あくまで経験に基づくざっくりした記事なのでご理解をください。

薬

今回はとある外科をローテ中の研修医1年目の僕が、だいたい平均するとこんな感じだというのを書いてみました。あくまで大体であり、細かい科や病院ごと、微妙に差が出ます。大体だという事をご理解してお読みください。



7:00 出勤

まずカルテのチェック、看護師さんのカルテ記載を見ます。担当患者に変化があるかどうか、検査に漏れがないかチェックします。



7:30〜 カンファレンス

科のDr.全員が1つの部屋に集まり、自分の担当患者の状態をプレゼンします。1人だけの医者が患者を診ていると、診断が誤っていたり、治療が標準や常識から外れたりする事があります。それを防ぎ、医療を標準化させるためにも多くのDr.の意見を取り入れ、チーム全体で知恵を出して治療にあたります。

また、この時新しく入院する患者について、詳しく説明する事が求められます。



8:00〜 回診

白い巨塔のように、Dr.全員でゾロゾロと、入院患者を順番に診察してまわります。カンファレンスで事前知識を全員のDr.に共有し、さらに診察も共有します。何か足りない所見がないか、見逃している所見はないか、など、これもまた治療の標準化に役立っています。

毎日行う科、回診する曜日が決まっている科、が存在します。 



8:30 〜12:30 外来

入院する必要ないが経過を見る必要がある人、治療をする必要がある人、は自宅から病院に通院していただき、経過観察、または簡単な治療を行います。下記のような人が対象です。

  1. 一度入院して退院した人
  2. 救急外来を時間外で受診しフォローするよう頼まれた人
  3. 自らの判断で予約した新患

また、曜日ごと、Dr.が異なる事が一般的です。そこそこの規模の病院では下記のようになっています。

月曜日 Dr.1 Dr.2 Dr.5
火曜日 Dr.3 Dr.4 Dr.5
水曜日 Dr.1 Dr.3 Dr.5
木曜日 Dr.1 Dr.2 Dr.4
金曜日 Dr.2 Dr.3 Dr.4

こうすると、Dr.が5人いて、そのうち2人は常に午前中フリーの状態になります。その2人が、例えば救急車で運ばれてきて緊急手術が必要になった患者の緊急オペを担当したり、朝の回診で入院患者に対する加療の漏れ(例えば処方薬がきれるとか、点滴がオーダーされていないとか、傷口の抜糸とか)を修正します。何もない時は論文を読んだり、学会発表の資料を作ったり、アカデミックな活動をに当てる事もあります。



12:30〜13:00 昼食

午前フリーのDr.が、自分の担当でない患者の管理漏れに気づいた時、この場でそのDr.に伝える事が多く、結局のところプチカンファレンスになります。 



13:00〜17:00 手術

自分が執刀しない手術でも、手伝いに入ります。あまりにも件数が多い場合には、手分けをします。



17:00〜17:30 病棟カンファレンス

Dr.だけでなく、看護師さんなどのコメディカルスタッフを交えてカンファレンスを行います。この際、看護師さんサイドからDr.へ情報が提供されます。逆もまた然りです。やはり職種が違うと視点が違うため、有益な情報が得られる時が多いです。



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さて、救急外来は24時間やっています。例えば夜中の2時、絞扼性イレウスで緊急手術が必要になった場合、腹部外科の先生の力が必要です。そのため、当直する当番が決まっています。基本的には若手を中心に編成され、通常業務が終わってから、今度は当直業務へと突入します。

忙しい時は全く寝る暇がありません。文字通り一睡もできないというやつです。



【当直がある場合】

17:30〜8:30 当直

基本的に研修医が常に起きていて、まず対応します。問診、所見をとり、各種検査を行い、研修医のレベルで治療できるものはして、無理そうなものだけ上級医へ渡します。

仮眠室があり仮眠する事ができますが、救急車が鳴り響いて患者が溢れかえっている時は、上級医の先生も常に救急外来にいるケースも多くあります。

外科系ですと、人手が足りない場合、当番でないDr.でも夜中に呼んで手術となる場合があります。



【当直がない場合】

17:30〜21:00頃 回診、カルテ記載

ある意味、やっと少し落ち着く事ができる時間帯です。じっくり入院患者を診察し、検査結果を吟味し、今どんな病態なのかを把握します。そしてそれをカルテにまとめて記載します。

それをふまえた上で、さらに必要な検査をいつ、どんな内容で行うか考え、それをオーダーします。症状や病態に合わせて、処方薬や点滴を変更します。

そして翌日、7:30からのカンファレンス(当直業務や緊急オペに入っている者は除く)から開始となります。当直後も夜20時ごろまで働くと、いわゆる36時間労働になります。日勤+当直+翌日の日勤=12+12+12=36時間、です。



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外来にしかかかっていない患者さんは、こう思ってしまうかもしれません。
Dr.1は週3回だけ、しかも午前中しか働かない


入院している患者さんは、こう思ってしまうかもしれません。
Dr.1は朝と夕方しか来ない、しかも時々来ない日がある
来れない時は、当直業務を行っているか、手術とかぶって回診できないケースが考えられます。


夜中に救急外来に来ている患者さんは、こう思ってしまうかもしれません。
眠そうな顔してるけど、今日は夜勤で明日は休みだろ、しっかりしてくれよ
明日も通常業務が待っている場合がほとんどです。

 

外来、入院管理、手術、当直、これらを全て行うので、1つ1つに割く時間はどうしても限られてしまいます。なかなか患者さんには理解されにくい事かもしれません。

また、上記の仕事内容以外にも、イレギュラーな仕事が舞い込んできます。例えば、担当の患者に急変があった場合は問答無用で夜中に呼ばれます。寝ていても、居酒屋で酒を飲んでいても、とにかく病院へ向かいます。死亡診断書を書いて、書き終わったら朝日が…なんて事もあります。

そして、勉強も仕事のうちです。仕事が終わっても、論文を検索して文献を漁って調べ、治療に役立てます。通常業務が21時頃終わっても、その後日が変わるくらいまで残って勉強しているDr.も全然います。

だいたいの勤務医はこんな感じで働いていると思います。この記事を読む前と後で、少しでもイメージが変われば幸いです。