医師国家試験が無事終了しました。今回、医師国家試験を体験してみてわかった事がいくつかありますので、記憶が新鮮な内に書き起こしてみました。偉そうに言える程勉強したわけではありませんが、参考になれば幸いです。

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結局直前の詰め込みが重要


よく勉強をいつから開始したか、どれくらいの勉強量をどれくらいの期間やったのか、という話になりますが、あまりそれについては議論する意味が無いのではないか、というのが僕の感覚です。

というのも、やはり医師国家試験に求められる知識の量は非常に膨大で、とてもこれらの内容を長期的に記憶してく事はほぼ不可能だと思ったからです。5番染色体長腕遺伝子欠損のMDSにはレナリドミドが使える、という知識を一体どれほどの長期間、脳にとどめておけるでしょうか。脳のCT水平断画像で、ウェルニッケ野と側脳室の空間的な位置関係を、どれほどの長く脳にとどめておけるでしょうか。これらの断片的な、1対1対応の知識の寄せ集めを長期的に記憶しておく事は、僕はほとんど不可能に近いと思いました。それは人間が得意とする所ではなく、コンピューターが得意とする所であるので、別に将来的に必要かと言われればそうでもないのでは、とも思いますし。


ですので、あくまで「医師国家試験に受かるためだけ」に必要な知識を効率よく脳に入れる方法は、結局のところ直前の詰め込みであると思います。正月明けからの1ヶ月で、1日12時間は勉強する。短いスパンで繰り返し反復し、(短期間しかもたないが)記憶できる量を多くする。過去問の解説で知らない事があればノートに書き出し、確実に記憶する。友達が話していて自分だけわからない事があれば、スマホにメモを残しあとで覚える。1日100個くらい新しい1対1対応の知識をつける。そしてそれを全て忘れない、覚えるまで勉強する。これだけでした。


それを裏付ける証拠として、12月半ばごろに行った模試で、僕より偏差値が10も上の人と、本番での点数(みんコレでの点数)に差はほとんどありませんでした。これは僕の頭が良いとかそういう事ではなく、やはり「高偏差値で余裕がある人」が過ごした「余裕のある1月」と、低偏差値の僕が過ごした「怒濤の詰め込み1ヶ月」による差が、元々あった差を埋めてしまったのだと思います。一部優秀な方、前々からかなりの準備をしてきた方をのぞいて、「直前の1ヶ月の取り組みは合否に大きく影響する」のはあると思います。逆に、この1ヶ月をサボると見事に合格圏からスベリ落ちるとも思います。僕の友人は、12月半ばの模試では偏差値が55くらいあったのですが、1月半ばの最後の模試で偏差値45まで下がってしまい落ち込んでいました。本人曰く「ここまでくれば大丈夫」だと思って少し手を抜いてしまった、と言っていました。ここで言いたいのは「ラスト1ヶ月が大事だからその前はどうでもいい」ではなく、「そこそこの位置をキープしつつ、成績の高低に関わらずとにかくラスト1ヶ月は全力で走り抜ける事が重要だ」という事です。


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自分を管理する能力がとわれている


次に感じたのが、とにかく自分を管理する能力が重要だという事です。健康面、肉体面、精神面、学習面、これらにおいて、自分をいかにコントロールし律する事ができるのか、どれくらいオペレーターとして優秀か、という能力が問われた気がします。


健康面については単純で、体調管理、人ごみに行かない、予防接種をうける、などなど当たり前の事です。肉体面では、「体重が増えすぎて睡眠時無呼吸症候群になってしまい、熟眠感が得られなくなってしまった」という友人や「ストレスでやせすぎて明らかに体力が減った」という友人がいました。自身の体重管理も、ある意味自己管理ですし、健康管理と密接につながってきますのでそこはウマく管理しておきたい所だと思います。


精神面では、誰しもがストレスを抱えているなか、精神的ストレスによる弊害をいかに減らす事ができるか、という能力だと思います。ストレスの感じ方、メンタルの削られ具合は個人の性質ですから変えようがありませんが、その受け取ってしまったストレスをいかにウマく解消するか、というテクニック的な部分が必要になってくると感じました。とはいえ、時間がありませんから「ディズニーランドに行ってストレス発散」とはいきません。すこし時間があれば「飲みに行く」などがありますが、直前期は誰も飲みに来てくれません(笑)。という事で、例えば「食事は必ず誰かと話しながらする」「冬は湯船につかりながら、模試の解説を読む」など、日常で必要になってくる生活動作の中で、時間を使わずにいかにストレスを解消させるか、というテクニックが必要になります。ここで、これらのテクニックを持たず、例えば「食事内容」にストレスをぶつけると、体重管理(=健康管理)に支障をきたしかねません。全ての管理能力はバラバラではなくつながっていて、トータルでのセルフコントロールがうまくできるか、が重要なのだと思います。


学習面における管理能力は、端的に言うと「勉強のスケジュールをある程度たてられるか」という事です。夏までにメジャーを終わらせて、夏に小児産婦、秋からマイナーやりつつQB1周して、冬は過去問と模試の見直し、というざっくりとした計画から、自分の能力に合わせて1日どれくらいやればいいかを逆算してそれを淡々と実行する。何も難しい事は無く、たったこれだけなのですし、医学部のほとんどの人はこれについては(一部の才能だけでここまで来た人をのぞいて)問題なくクリアする(でないと入学できていない)ので、ここがおろそかになるとかなり手痛いです。


かの三苫先生が、「国家試験は賢い人が受かるんじゃないの、強い人が受かるの」と動画の中でおっしゃっていました。これは、「自分を管理し律する強さを持った人が受かる」という意味だったのでは、と僕は思っています。



間違って覚えない


後々ボディーブローのように効いてくるのがこれです。

勉強していると、どうしても自分だけでは理解できない、よくわからない部分が出てくるのは誰にでもあると思います。そういう「わからない知識」を、時間がないという理由で「とりあえず放置」する事が、試験が近づくにつれて多くなると感じました。そして悪い事に、うまく放置できていればいいのですが、「多分こう」みたいな曖昧な認識を真実だと思って記憶してしまい、結果的に間違った知識として脳に定着させてしまう現象がたまに起こります。


これを解消してくれるのが、「友人との会話」です。

友人がある事柄について話していて、それについて自分だけ間違えた知識をもっていると、話の辻褄が合わなくなります。ん?と思うタイミングがあります。そこについて詳しく友人にたずねると、自分が間違えていた事がわかります。たまにですが逆もあります。複数人での会話は「知識の平坦化」作用を持っていると言えるでしょう。皆の足並みをそろえる事が大事な試験ですから、積極的に会話をして、自分の知らない知識はもちろん、曖昧な知識を明確にする事も大事だと思いました。


もし1人で勉強している場合は、どうしてもこの自浄作用が働きにくいので、自分が何をわかっていて何をわかっていないか、メモするなり付箋を貼るなりして自分で何とかするしかありません。食事がストレス解消になる、知識の平坦化作用を得られる、これらが複数人で勉強するとありますので、それが「友達と勉強すると有利」と言われる所以だと思います。1人で勉強する方は、ここを補う事ができるようにしたい所です。



こんなところでしょうか。他にも「メックとテコムどっちがいいんだ」とか「何を何周すればいいんだ」とかがありますが、それよりもこの3つが大きく影響したと感じました。参考程度までに。
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